夜尿症
「小学校2年生でもおねしょしてたら治療しましょう!」
こどもは誰でも2歳ごろまでは毎晩おねしょをしますが、
その割合は年齢とともに減少します。
しかしながら小学校低学年では約10%、
高学年でも約5%にみられるといわれています。
ほとんどが成人までに治癒するため、
以前は自然経過を見守る考えが強かったのですが、
一部の症例では成人になっても治癒しないことがあること、
また本人の心理的負担が大きいことから小学校に入っても治らない場合は
治療をしたほうがよいと考えられるようになりました。
僕はこれまでに何人も夜尿症の患児を治療した経験がありますが、
まず治療を始める前に自宅でやっていただきたいことが3つあります。
1)夕食は塩分を控え、寝る前3時間はなるべく水分を摂らない。
普通の家庭では寝る前3時間以内に入浴するため、
入浴後水分を摂らせないというのはなかなか難しいのですが、
夕食前に入浴する、水分を欲しがったら氷をしゃぶらせるなどして対応しましょう。
2)夜寝る前には必ず排尿し、夜間は起こさない。
夜間は「抗利尿ホルモン」というものが分泌されるために尿量が減少し、
通常は朝まで排尿しなくても大丈夫なのですが、
夜間に起こして排尿させると抗利尿ホルモンの分泌が悪くなるため、
寝ているときの尿量が増えてしまい、
結果としておねしょを長引かせる原因となることがあります。
3)おねしょしても絶対に怒らない。
おねしょしたくてする子は一人もいません。
おねしょした子を叱っても、本人の気持ちが萎縮してしまい、
おねしょがひどくなるだけです。
「お母さんも一緒に頑張るから、シーツ汚しちゃったらちゃんと言いなさいね」と
一緒に頑張る姿勢を見せることが本人のやる気につながると思います。
以上の3つを守るように指導するだけで治癒する子も少なからずいます。
しかし、それだけでは治らない場合には、治療をお勧めしています。
夜尿症の治療とは?
大きく分けて、薬物療法とアラーム療法があります。
1) 薬物療法
抗利尿ホルモン薬(夜間の尿量を濃くして少なくする薬)、
抗コリン薬(膀胱機能を安定させ、膀胱に尿を多くためられるようにする薬)、
抗うつ薬(弱いながら抗利尿ホルモンの分泌を促し、抗コリン作用も持つ薬)があります。
問診、尿検査などからお子さんの夜尿のタイプに適した
薬を選んで投与することになりますが、
それぞれ副作用の可能性がありますので、
それを十分に説明した後に本人、親御さんの希望に沿った薬を選びます。
2) アラーム療法
寝る前におねしょするとアラームが鳴るパットをつけて寝ます。
おねしょするとアラームが鳴るので、すぐに起こします。
そのときトイレに行っても行かなくても、どちらでもよいです。
就寝時排尿が始まったときに起こされると排尿が急に止まるので、
これを繰り返すことで膀胱容量が増えて夜尿症が治ります。
この治療法を続けることで、
3ヶ月で50%、6ヶ月で70%の患児が治癒するといわれています。
必ず親御さんが起こさなくてはならないので
親御さんが寝不足になってしまう可能性があること、
保険適応ではないので専用アラーム、パットを
自費で購入していただかなければならないことが欠点ですが、
全く薬を使わないので副作用の心配がありません。
いずれにせよ、夜尿症の治療に特効薬はありません。
小学校高学年になって宿泊学習が2週間後にあるからとクリニックに来ていただいても、
そんなに早くは治せないのです。
薬物療法、アラーム療法ともに根気がいる治療法であり、
また本人に治す気がなければ絶対に治療効果は出ません。
当クリニックでは8歳まで経過観察し、
それでも治癒する傾向が見られず、
本人が治したいと強く希望している場合に治療を行います。
場合によっては数年かかる場合もありますが、夜尿症は必ず治ります。
治療することで治る時期を早め、本人の心理的負担を早く取り除くことになり、
結果としてお子さんの日常生活の質を向上させるものと考えます。